次なる税理士法改正に向けて2017【税理士制度の歴史】

2017年09月01日

税理士制度の歴史

渋谷部会 倉林倭男

税理士制度の揺籃期

税理士という職業の原型は、明治時代に富国強兵、日清・日露戦争のための増税が重なり、納税者の間に税務や会計に詳しい者を求める状況が生じた中、自然発生的に税務会計専門家としての新たな職業として誕生したといわれている。これが公式に認められたのは明治45年の大阪税務代弁者取締規則によるとされる。その内容として、税務代弁者は警察官署に出願する免許制とされ、報酬規定を定め、所定の事件簿を備えることが求められた。つまり税務代弁者を取り締まるための規則であった。その後満州事変(昭和6年)ころから戦時色が強まるなか、昭和8年に税務代弁人を法制化する税務代理人法案が議員提案として国会に提出されたが、税務代弁人のなかにも反対者が多く、不成立となった。しかし、支那事変、大東亜戦争と進むなか「税務代理士の制度を設け、其の素質の向上を図りますると共に、是等の者に対する取締りの徹底を期し、之に依り戦時に於ける税務行政の円滑なる運用に資せむとするのであります。・・・」とする政府提案によって、昭和17年2月23日税務代理士法の成立をみるに至った。この税務代理士法では、大蔵大臣の許可による資格付与という制度設計になっており、大蔵省の統制色が強い取締立法の性格を持ったものであった。

 

税理士法の成立

戦後、日本国憲法が公布・施行され、昭和22年に所得税法等に申告納税制度が導入された。また、第一次及び第二次のシャウプ税制使節団(昭和24,25年)の報告書等により指摘された、納税者の代理人制度の重要性から、昭和26年に税務代理士法が廃止され、新たに税理士法が制定施行された。これは税務代理士法改正の動きの中で、議員提案として国会に提出され成立したものである。

税理士法の第一条は〈税理士の職責〉として「税理士は、中正な立場において、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務を適正に実現し、納税に関する道義を高めるように努力しなければならない。」と定められた。後年の解釈になるが、昭和38年の政府税制調査会の「税理士制度に関する答申」では、「税理士が納税者の委嘱を受けて職務を果たしていくその立場は、委嘱者の立場とまったく重複するような形においてではなく、税務会計専門家として見識のある判断を加えるという形において把握されなければならないことは当然であろう。現行法が『中正な立場』という字句を用いて前述のような規定を設けていることは、まさに上記のような税理士の公共的立場を明らかにするためのものであって、意義深いものと認められる。」と述べられている。

 

税理士法の改正

その後税理士法は毎年のように他の法律との関連整備として改正されているが、昭和31年、36年、55年、平成13年、26年は、税理士法自体の大幅な改正がなされている。

【昭和31年改正】

資格問題として、計理士を含む税務職員等を対象とした特別試験制度が導入(5年間限定)され、税理士の計算した事項等を記載した書面添付制度が創設された。また、税理士会への間接強制加入制度の実現と税理士会の支部強制設置が定められ、一般監督権、会則認可権、総会決議取消権、役員解任権等の国の監督が強化された。

【昭和36年改正】

税理士登録事務が大蔵省から日税連へ委譲され、税理士試験全般の見直し検討が終わるまでの、「当分の間」現行の特別試験制度を延長するとされた。

【昭和39年改正(廃案)】

政府は昭和38年政府税調答申の考え方を基本に、39年通常国会に改正法案を提出した。

改正内容は、対象税目を原則全税目にする等の税理士業務の拡張、附随会計業務の新設、特別試験制度の廃止など日税連の要望を取り込んではいたが、一方で税務職員に対する資格認定制度の導入、科目合格制度の廃止等の日税連の考え方と著しく異なるものがあり、受験生を含む業界の反対運動もあって、翌40年に廃案となった。

【昭和55年改正】

日税連は39年の廃案運動から、法改正を能動的にと発想を転換し、会内に税理士制度調査会を設置して、43年同調査会から「わが国における税理士制度のあり方」の答申を受ける。その後全国の税理士会からの意見も取り込み、47年に「税理士法改正に関する基本要綱」を理事会決定した。しかし、その後日税連と国税庁との間で改正項目に関して折衝が行われる中で、基本要綱の多くの項目は実現可能性がなく、改正は困難とされた。結局、税理士の使命の明確化、財務書類の作成等付随業務の新設といった新規項目はあるものの、39年廃案のお色直しのような改正内容となった。

【平成13年改正】

55年改正から10年以上の時間をかけて、日税連は次なる税理士法改正を模索してきたが、平成7年に「税理士法改正に関する意見(タタキ台)」をまとめ、9年にそのタタキ台の審議状況報告を公表して、新たな法改正を目指した。

時を同じくして政府は行政改革委員会を立ち上げ、規制緩和策を検討し「最終意見」を取りまとめた。この最終意見において、士業の業務独占規定は、当該資格を有しない者を市場から制度的に排除するという、参入規制的要素を色濃く持つものとし、その結果、限られた有資格者が特権意識を持ち、当該有資格者による特殊なムラ社会が形成されがちであると指摘している。そのような市場においては、一般に競争が排除され、サービスの質が低下し、価格が高止まりしがちである。有資格者も無資格者も市場という共通の土俵で競争することによって、全体として、より良いサービスが、より安価に提供されるようになると述べている。この規制改革の風も受けて、補佐人制度、法人制度、補助税理士制度等が新設され、報酬規定、広告規制等が廃止されたのであった。

【平成26年改正】

今回は毎年の税制改正のうち納税環境整備の関連項目として、税理士法単独の改正ではなく、整備法案の中で法改正されたものである。一丁目一番地と声高に喧伝された、公認会計士への自動資格付与廃止は、ご存じのとおり、容認しがたい指定研修による決着となった。その他の改正項目も財務省側からの提案事項が多く実現された。

 

今後の税理士制度

これからの税理士法改正は、もしかすると引き続き税制改正の関連項目として、財務省と折衝しながらということになるのかもしれません。

税理士法単独での法改正は、それこそ真に「国民のための税理士制度」が実現されるときではないでしょうか。そんな日のために、税理士法を勉強し、税理士制度の改革に努力しましょう。

 

 

参考文献

北野弘久「税理士制度の研究」税務経理協会

坂田純一「新版実践税理士法」中央経済社