次なる税理士法改正に向けて ④

2017年06月01日

税理士業務・資格取得制度と試験制度

新宿部会 菊池 純

1 税理士制度は誰のための制度?

昭和17年2月23日に施行された税理士法の前身税務代理士法では、太平洋戦争のさなかということもあり、税務代理士に、税務行政の円滑な執行に奉仕する徴税の下請機関としての役割を与えたにすぎなかった。

昭和21年に日本国憲法が公布、租税法律主義が宣明され、昭和22年、所得税、法人税、相続税の3つの主要な国税に申告納税制度が導入された。

租税法律主義により、法律に定めのない納税をしないことが国民の財産権を守るうえで重要になる。さらに、申告納税制度は、納税者が租税法の規定に基づき、自ら税額を計算し納付する制度であるため、納税者の代理人となる租税の法律家の存在が必要になった。

これを受けて、昭和26年議員立法により税理士法が制定された。税理士法は、資格取得の要件に国家試験制度を導入するなどそれまでの税務代理士制度を大幅に改変したものである。

今日の税理士法は、昭和31年、36年、55年、平成13年、26年に大きな改正がなされている。

現行税理士法は、税理士の基本的な役割として、租税法律主義による納税義務の適正な実現と、納税者の権利・利益の擁護の二つ合わせて規定している。

まさに税理士制度は国民のための制度である。

2 税理士制度のためにどんな税理士が必要か。

税理士業務の税務代理、税務書類の作成、税務相談を担うために当然、租税法の知識と応用能力が必要である。また、税理士業務に付随する業務に会計業務があるので、会計学の知識と応用能力も必要であろう。

そして、納税者の権利を擁護するうえで課税庁と対峙する場面が出たとき、税法、会計に基づく主張をきっちり述べる能力、気構えが重要である。そのためには、税法は徴税の法ではなく、徴税権力に対抗する納税者側の権利立法としてとらえることが納税者権利擁護につながると思う。

3 そのための資格取得制度はどうすればいいか。

公認会計士は租税法の知識が不足している。弁護士、税務官公署職員は会計学の知識が不足している。その不足している部分は、税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定する税理士試験で担保する必要がある。

日本公認会計士協会は、公認会計士制度の歴史、公認会計士の能力、識見等、国際的な監査業務等への信頼の確保その他税務サービスの有益な提供等の観点から、公認会計士が税務の専門家であることは明らか、と述べている。

しかし、日本のように独立の税理士資格が存在する国において、それゆえ税制が効率よく機能し、経済が発展、日本が世界一の大国の一つになった理由であるにもかかわらず、公認会計士が税務の専門家であるという主張は、税理士が監査の専門家という主張と同じで間違っている。

4 そのための試験制度はどうすればいいか。

税理士試験は、必ずしも一度の試験で全科目(5科目)を受験してすべて合格する必要はなく、何年かに分割して受験することができ、合計5科目に合格すれば税理士となる資格を取得することになる、いわゆる科目別合格制度が採用されている。この試験免除制度の適用に当たっては有効期限というものはないので、時間はかかるが、あきらめずに挑戦し続ければ必ず合格する試験であるといわれている。

これに対し公認会計士試験は、一次試験を実施したのち、その合格者のみを対象とした二次試験を実施する方法なので、受験資格もなく、早い時期から受験でき、一発合格なので短期決戦型試験である。

すなわち、試験方法の違いが合格までの年数の違い、税理士合格まで7年から10年、公認会計士合格まで3年から5年、になっており、働きながら受験できる税理士試験は非常にすぐれた制度なので、公認会計士試験制度に近づいて一発合格の制度にするようなことはあってはならない。

とはいえ、資格の問題を解決するまでは公認会計士ルートの税理士が増え続ける。不足している部分を登録前研修で補う、青税に入会する、などしないと、納税者の権利擁護は難しくなる。